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ノットクリティカル
「そうじゃないとでも、言うんですか?」
「ならば……斬るっ!」
兵士が剣を振り下ろしてくる。
それを私は2本のナイフで受け止めた。
いつもの剣とは強度が違うのだ。
私自身が片手で受け止められるとしても、衝撃を分散させないとナイフの方が持たないかも知れない。
「なにっ!?」
「ガラ空きです!」
無防備な腹部へと蹴りを叩き込むーー
「っ!?」
手応えが、ポイントがズレた。
足の裏の真ん中でポイントを捉えるはずだったのが、
普段の靴とは違い踵にヒールがある分、
上手く蹴りを放てなかったのだ。
鎧越しに腹部へ気功を叩き込むつもりが、ただ押し出す力として兵士をのけぞらすだけになってしまった。
「ぐっ……」
兵士はよろけながら距離を取る。
「ちっ、なんて女だ!鎧を蹴ろうとしてくるとは!」
「……」
ポイントをずらして、踵で行くべきだろうか?
しかし、それでは威力が乗って殺しかねない。
彼らの"事情"を考えると殺してしまうのは余り宜しくない。
彼らは利用されている"歯車"にすぎないのだから。




