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光の影
………………
色とりどり、華やか。
そんな抽象的な表現しか出てこない。
知っていることと、理解することは違う。
確かに、午前中に見たスラムと比較すれば、同じ国同じ街なのかと思うだろう。
ただ、そんな事はこの国に限ったことでもない。
貧富の差はどこにもあるもので、
それを正すには極端なまでの平等主義に傾倒するしかない。
とは言え、比較しているのが王宮とスラムなのだから、
王族が贅沢をしなければ、必要以上に税を取らなければ、
多少なりとも改善する。
そういう風に、クリシュナは考えているはずだ。
だけど……それでも、末端までは行き渡らなかった。
王と言えど、その全てを自由にするには、
皮肉にも嫌悪した父親のような独裁的な方法を取るしかなかった。
……話が逸れてしまった。
とにかく、美酒も美食も煌びやかな音楽も、着飾ったぶーー貴族達も、喧騒も、結局は誰か犠牲の上にある。
喧騒の中、美女達にクリシュナは囲まれているが、
どことなく、そこに暗い影が見えることを知っているのは私だけだろう。




