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分かった上で
それでも、クリシュナは声が漏れないように、
平手を口と垂直についたてのようにして、小声で囁いた。
「パーティーで騒ぎ……いや、それ以上のことが起こりそうなんだ」
……
「騒ぎ、ですか」
「ああ、それで済めばいいけど」
いや、恐らくはそれで済みはしないだろう。
「どこでその情報を?」
「それは……」
クリシュナは言い淀んだ。
言ってしまえば、それが"何が"起ころうとしているかも言わねばならなくなる。
「まぁ、いいです」
本当は知っているのだし。
「あ、ああ……深く追求しないでくれて、ありがとう」
「ええ、そろそろ向かいますか?」
「そう……だな。早く着いて悪いということもないだろう」
そうして、パーティー会場に向かった。
私はクリシュナの後ろに着き、その後ろを着飾った使用人達が続いた。
先を知っているというのは、必ずしも良いことではないと感じた。
これから、パーティー会場で行われることが、茶番のように感じられてならないからだ。




