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王たる者……
「では、貴方はそのために王になるつもりですか?」
「……ああ」
クリシュナはミックから手を離し、空を見上げた。
「父上は偉大だ。雲の上の存在だよ。しかし――」
「……」
「弱者を切り捨てるのも、王の資質だ。だけど、父上のそれはあまりにも民を顧みていない」
「だから、貴方がそれを変えたいと?」
クリシュナは頷いた。
「父上の代でそうなるとは限らない。だが、仮に父上と同じことを続ければ、いずれ国は傾く。
王は所詮シンボルに過ぎない。国を支えているのは民だ」
それを、王族が言うのか。
「……」
クリシュナの口が真一文字に結ばれたかと思うと、頭をぶんぶんと振った。
「不用意なことを言ったかも知れない。僕が言ったことは胸にしまっておいてくれ」
「!……確かにそうですね、こんな屋外で、誰が聞いてるとも限りません」
王族貴族からしたら、とんでもない話だろう。
聞きようによっては、現政権の批判とも捉えかねない。
それは不都合な”口実”になる。
「すまない、君を前にするとついつい本音で話してしまう」




