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罪悪感
クリシュナは水を飲むミックを見ながら、慈愛の笑みを浮かべていた。
言っては悪いが、今までのこの男の印象とはかけ離れている。
「……正直、意外でした」
「うん?僕がこんなことをすることかい?」
「ええ」
クリシュナはミックの髪をそっと撫でた。
「貧困の原因は彼らの努力不足だけではない。
国の政治の力が不足しているのが大きな要因だ」
「……」
その志は正しくはある。
だけど、政治だけではどうしようもない側面もまたある。
もちろん、政治がベストを尽くしているかどうかも、また別問題ではあるが。
「少なくとも、子供に罪はない。
貧困の家庭に生まれたから、子供が貧困にあえぐのは自己責任とは言えない」
子供に責任はないのは確かだ。
「僕はあんな宮殿の中で裕福な暮らしをしている。王族だからというだけで……
同じ街では路上生活者もいるというのに」
悲しいかな、人は平等ではない。
恐らくクリシュナの立場はそれを一番近いところで感じられるのかも知れない。
「……これは、ただの罪滅ぼし……いや、自己満足に過ぎないんだ」




