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捨てられた街へ
何故そんな場所に向かうのか、目的はわからないが、
荷台を引かせているのだから、何かを運んでいるのだろう。
それも王子が直々に……
「それで、何を運んでるんですか?」
「物資だよ」
「いや、それはそうでしょうけど、何の物資を運んでるんですか?」
「何って、食料品とか日用雑貨とか、生活に必要なものさ」
「?」
まるで商人。
シンシアさんがやってるみたいなことをする。
商売?しかし、同じ街で物資を運ぶことにどれほどの儲けがあるのだろうか?
そもそも、王子であるクリシュナが商売なんてする必要があるのだろうか?
そんな疑問を口にするより先に、ラクダは歩みを止めた。
「さぁ、ついたぞ」
「ここは……」
荒れたボロ小屋が立ち並び、頬まで汚れた人が路上に座り込んだり、寝転んでいる。
他にも建物がない訳ではないが、そのどれもが正常な状態とも言えず……
有り体に言えば、そこはスラム街だった。
「……」
言ってはなんだが、こんな場所で商売なんて出来るとは思えない。
逆に、クリシュナには到底似つかわしくない単語が浮かんだ。
『慈善活動』――




