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使用人
「う……その通りだ……」
「ともかく、パーティーでドレスが必要なら着ますが、それまでは動きやすい服を下さい。
私の元の服でもいいので。護衛に支障が生じます」
「あ、ああ、そうだな」
と、クリシュナは傍に控えていたメイドを手で招いた。
「聞いていただろう?至急、用意してもらえるか」
「仰せのままに……」
メイドは頭を下げて、部屋を出ていった。
「……あの人、随分大仰な言い回しをするんですね」
「ヒッチコックか、印象的だろう?」
「そうですね…………ヒッチコック?苗字持ちで使用人をされてるんですか?」
苗字というのは、貴族だったシンシアさんがそうだったように、それなりの地位を持っていないと持てない。
国によって、その差はあるだろうが、全ての国民が苗字を持つ国家は現状ではこの世界では存在していない。
「ああ、元はそれなりの家柄だったんだ。しかし、家の方が没落してしまってね……」
「そう、ですか……」
まぁ、深く突っ込むのも失礼だろう。




