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万全の備えとは
「万全、か……どうして、そう思う?」
「え?だから、私が警戒をしていた方が……」
「それが、万全だと?些か傲慢じゃないかな」
「っ……だと、しても、警戒の目が一つ増えることに意味はあるでしょう?」
「確かに、それはそうだ。しかし、果たして、それが万全なのかい?」
「どういう意味ですか?」
「君は自分の持久力、活動時間に自信があるようだけど、
休憩・休息なく常に警戒を続けるそれが万全なのかい?」
「え、ええ、勿論、可能です」
「100%で?」
「……!」
「君の驚異的な身体能力なら7、80%……いや、98、9%を維持出来るかも知れない。
だが、それは100ではないだろう?」
「それは……そうかも知れませんが」
「ならば、休息はとってくれ。
夜に襲われる可能性はあるが、それは他の人間の警戒で充分だ。
今、ここで君の力が必要だという時に、もっとも万全でいてほしいだけだ」
「……」
私は左の前髪を抑えるようにかき上げた。
私が100%の状態でないと立ち向かえない相手……
そんな相手がいる訳がないというのは、私の慢心だろう。




