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遠慮
「ああ、そこがゲストルームになっているんだ。僕専用の客室だ」
クリシュナが指差した扉を開けた。
すぐに部屋ということはなく、扉を開けてすぐ見られることのないよう、廊下が先の方で右に曲がっていた。
「近くの部屋だということは了承してくれ、
寝込みを襲われる危険といっても、王宮でそうないとは思うが……」
「それくらいは、護衛としては当たり前でしょう、構いませんよ」
同じ部屋で寝てくれとは言われないだけマシというものだ。
「うん、用があったり、モーニングコールは侍女に向かわせる。
逆にクリスは何かあったと思えば、すぐに駆けつけてくれ、勘違いだろうと構わない」
命を狙われる可能性を考えれば、当然……むしろ、甘い対応とも言えたが、
わざわざしてくれた気遣いを拒否するのもどうかという話だ。
「わかりました。部屋で休みますが、貴方は?」
「僕も少し考えてから、休むよ。一息ついたとはいえ、くたくただから」
私は頷くと、扉の中に入っていった。
体力よりも気疲れだ。
今はもうとにかく、この煩わしいドレスを早く脱ぎたかった。




