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めんどくさいやり取り
「あと、午前中に行きたい場所がある、同行を頼むよ」
「あ、はい……」
今さらながら、すっきりしない物言いだな、と思う。
護衛とはいうものの、私は頼まれて、”してあげてる”に近い。
報酬を出すとは言われたけど、だからといって部下のような扱いを受けるのもおかしな話だ。
そんな私の気持ちを察してか、クリシュナは表情を崩した。
「本当に頼りにしているよ、君のお陰でいい方に進みそうだ」
「はぁ」
そんなあからさまにご機嫌とりにこられても、それはそれで反応に困る。
「ふむ……美しい花には、水と共に栄養も必要だろう。
なにか、欲しいものはあるかい?」
「ありませんよ。
そうやって口説いてくるの、やめてくださいって言ったはずですが」
「あ、いや……つくづくクリスには通じないなぁ」
「他の人にもしてるんですよね。軽薄な人だと信用を失くしますよ」
「う、うむ…………そうだ、今日の用事はこれで仕舞いだ。明日までゆっくり休んでてくれ」
「そうですか……ところで、私の部屋は?」




