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椅子とりゲーム
「その理屈はわかりますが……」
「ああ、いや、母上が亡くなったのは、物心つく前だ。
正直、どういう感情を持つべきなのか、わからんのだ」
「そう……ですか」
王と言えど、華やかなばかりではない。
こういう血なまぐさいところもあるだろう。
そして、私もまた、クリシュナにどういう感情を抱くべきかわからないでいた。
そんな、クリシュナはふぅ……と大きく息を吐き出した。
「クリス、何故、暗殺なんて起こったと思う?」
「え、それは……」
「玉座が欲しいからだよ」
「……」
クリシュナは何かに気付いたかと思うと、首を横に振った。
「厳密には権力だ。
王妃という立場はそれはそれで魅力的だったろう。
だから、そこに新たに座りたい者は、母上がいなくなれば、その椅子が空くと考えた。
そして、また、僕の椅子が空くことが望む者に、僕の命が狙われだした」
「…………そうまでして、欲しいものなんですか?」
「僕の気持ちでいうなら、それほどのモノだとは考えていない」




