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玉座
「そんな、まさか……」
「あってみれば、わかるさ」
そう言うと、クリシュナは大きな扉の前で立ち止まった。
随分と大仰な装飾が施されている。
だから、すぐに察した。
「……」
クリシュナは扉に手をかけたまま、ゆっくりと深呼吸をした。
そして、覚悟を決めたように目を見開くと、意を決して扉を押した。
――――//――――
『戻りました、陛下』
『…………クリシュナか』
――――//――――
「戻りました、陛下」
「…………クリシュナか」
!?
え、なんだ、今のは……
同じ光景を二度、見た……?
いや、デジャヴ……あるいは未来視でもしたように感じる。
そんな、まさか…………そもそも、何故?
「視察業務は滞りなく終えました」
「そうか」
「しかし、それとは別に報告すべきことがあります」
「……なんだ、それは」
「はい、それが――」
「いや、そうではない」
「――」
クリシュナは口を噤んだ。
まるで、苦虫を噛み潰したかのような表情だった。
「それは、朕の耳に入れねばならぬ話なのか?」




