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棘
食事を終えると、すぐに出番になった。
なんでも……
「父上に報告をする。ついてきてくれ」
との事だ。
クリシュナから2歩ほど後ろをついて歩く。
流石に王宮は広い。
構造を理解せずに、はぐれれば、合流は難しいだろう。
「……ところで、お父さんというのはやはり?」
「ああ、ヤンカム国王陛下だ」
国王……やはり、そうか。
しかし、変わった名前だ。
異国だからかも知れないが、聞き馴染みのある”クリシュナ”と比べれば、初めて聞く名だ。
「私のことはなんと説明するつもりですか?」
「ああ……聞かれれば、護衛を雇ったと言うよ」
「聞かれれば?」
「うん、恐らくは気にも留めないだろう。
人のことに興味はないんだ、あの人は。
ましてや、王族でも、貴族でも、豪族でもない人間には」
「そう……ですか……」
随分と棘のある言い方だ。
実際に、そうなのかも知れないが、自分の父親に対しての評価としては冷たい。
むしろ、嫌っているのではないだろうか?
「父上には期待していないよ。きっと、僕が殺されかけたと聞いても、眉一つ動かさないさ」




