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1と2
「では、私にここまで、その話を出来なかったのは?」
クリシュナはチキンから右手を離し、手を拭いたかと思うと、突きつけるように人差し指を立てた。
「第一の理由として、信憑性だ」
「私が、信じなかっただろう、と?」
「それとも、信じたかね?」
「いいえ」
確かにその通りだ。
いくら身なりが裕福であっても、
砂漠の真ん中でお供を連れずに行き倒れている人間を王子とは思えない。
「……あんな場所で、一人でいれば信じないでしょうね」
とは言え、実際その”時”があった訳でない以上、恐らくは、なのだけど。
「それが、第二の理由でもある」
クリシュナの指は2本立っていた。
「僕はね。命を狙われてるんだ」
「……」
自分の表情を引き攣るのがわかる。
クリシュナが嘘を言っているとは思えない。
だからこそ、予想がついてしまう。
王族である以上、暗殺の危険性は常につきまとうだろう。
特に、王位継承順位の高いクリシュナは……
要は、そんなドロドロした話を聞かされるのかと、聞くしかないのかと嫌な気持ちになったのだ。




