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クリシュナ
「王家……」
「そもそもは建国の父、クリシュナ=アガーナ1世がその始まりだ」
「1世?では、あなたは……」
「僕は7世になる」
「7世……そんなに」
「国を興した偉大な祖先の名だ。
元々はよくあった名前だったそうだけどね。
1世が即位したことで、クリシュナと言う名に莫大な人気が出た」
「つまり、クリシュナだらけになった?」
「そう。それ自体は喜ばしいことだったが、
元老院から、クリシュナ1世の”格”が貶められるのではないかという声があがってね。
3世の時代に、法規制によって、クリシュナの名は王族にしか使えないこととなった」
「なるほど」
「加えて、慣例としてクリシュナの名は王位継承順位の高い第1王子にのみつけられることとなった」
つまり、この国では”クリシュナ”は彼だけか、いたとしてもごく近い親族にしかいないという事なのか。
「うん?つまり、貴方はその第1王子だと?」
「ああ、そういうことになる」
特に驚きはなかった。
王子という時点で大きな心のハードルを越えているのだ。
それが第1だろうが第2だろうがそのハードル以上のハードルにはならない。




