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無駄話はいらないんだって
「うん?着心地がよくないのかな?」
そのための仕草ではなかったけど、着慣れていないことは確かだ。
「そうですね。いつもの服がいいです」
クリシュナは女中の方に手で合図をした。
しかし、女中は申し訳なさそうに首を横に振るだけだった。
「そうか……しかし、君の服は洗濯に出してしまってね。
この場はその服で我慢してくれないか」
「はぁ……まぁ、無理には言いませんが」
「心配しなくとも、似合っているよ。
女性は花だね」
「……」
私が呆れた顔をしていると、クリシュナは首は振った。
「いや、クセでね。こういうのは不快だったね、申し訳ない。
それはそうとして、座ってくれ。
食事にしよう、毒見は済んでいる」
毒見……そういうところは流石に王子という訳か……
いや、待て、そもそも、まだ本人の口から聞いていない。
「それよりも、先に話を聞かせて欲しいんですが」
「はは、勿論話すよ。とは言え、長旅で疲れているだろうし、ほとんど飲まず食わずで来たんだ。
食べながら、話そうじゃないか」
私は大丈夫なのだけど……しかし、ここで変に抵抗しても余計話がこじれるだけだ。
私は、おとなしく席に着いた。




