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逆ドーナツ
だけど、このスピードじゃあ、自分の足で進んだほうが早い。
正直、ラクダごと抱えて走ったほうが早いのだけど、
街中でそんなことは出来ない。
結局はそのまま成行きに任せるしかないのか。
私がせっかちなだけなのかも知れないけど、ひどく苦痛だった。
クリシュナとは会話がない。
口説くなと言った手前、私から話しかけるのも気が引ける。
当然、蝶に話しかける訳にもいかない。
ゆっくりと流れる街の風景を眺めつづけることしかできなかった。
……
…………
……………………
本当に街の中心に向かっているようだった。
『パラダイム』は中心に行けば行くだけ栄えているようだった。
恐らくその理由は、街の中心に王宮があるからだろう。
つまり、王宮に近づけば近づくだけ……中心に富が集中していっているということだろう。
クリシュナの見るからにボンボンっぽさを考えれば、中心の方に進むのは納得出来た。
……
いや、でも、どこまで行くんだろうか?
……
あれ?まだ止まらない?
……
え、いや、ここって……




