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都合のいい話
「クリスか、凛とした名だ
美しい響き……旋律と言おう。
その旋律が君にぴったりだ」
「は、はぁ……」
そういうのいいんで、という言葉が喉まで出かかって、必死に飲み込んだ。
下手なことをいって、へそを曲げられても面倒だ。
「そ、それで、さっきのことですが……」
「さっき?……すまない、何のことだろうか?」
「”クリシュナ”って名前がどうとか……」
「……!」
クリシュナの表情が一転、険しいものになった。
「……どうしたんですか?」
「あ、ああ……すまない。
……君のことは信用している。しかし、念には念をというものが必要だ」
「は……?」
「少なくとも、今は話せない…………『パラダイム』についてから、その話はさせてもらおう」
「……」
それで信用しろ、というのは些かムシが良いのではないだろうか。
それなら、こちらにも考えがある。
「わかりました。なら、早速出発しましょう」
「えっ!?……いや、待ってくれないか、見ての通り僕はヤサ男でね。
体力がないんだ……」
そうだろうな、という感想が浮かんだと同時に、そんなことは関係ないと首を振った。




