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強制一息
宝石を受け取り、男の回復を待って、『パラダイム』に向けて出発することになった。
私は仕方なく、日陰に腰を下ろし、受け取った宝石に目を落とした。
「……」
素人目ながらも、見せかけだけの複製品ではない、本物の宝石だと思えた。
それが、なんという宝石なのか、名前も知らなかった私でも真贋を疑う気持ちになれなかったくらいだ。
「ふーん、綺麗なもんやね」
外套の隙間から蝶が顔をのぞかせる。
ちらりと男のほうを気にかけるが、特に気付いてはいないようだった。
「見られると面倒だから、声抑えてね」
私も小声で語りかける。
「わかっとるよ、わたしがどれくらいややこしい存在かなんて」
それなら、顔をのぞかせること自体やめて欲しいのだけど……
「しかし、見事なもんやな、自然のもんをそんな風に加工出来るんやね」
確かに本物ということは天然自然のものを切り出したということだ。
「……でも、こんなの服の装飾にしたら、コケた時、大怪我しないのかな」
「砂がクッションになるんやろ」
「いや、そんなサラサラな砂ばかりじゃないし、多分建物の中は砂じゃないよ」




