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異国文化感
男性の体温は下がり、辛そうだった表情も和らいでいた。
「うう…………うん?」
朦朧としていた意識もはっきりしてきたらしい、男性は傍で覗き込む私に気付いた。
「天使……?僕は死んだのかな?」
「何を言ってるんですか」
天使が砂漠越えの外套を羽織るものか。
それとも、それは先入観で、砂漠にいる天使は着用してたりするものなのだろうか?
「ああ、すまない。キミが余りにも美しかったもので」
「……」
この男が、ただ単にナンパなだけなようだ。
よくもまぁ、そんな歯の浮くような台詞を起き抜けに言うことが出来るものだと、
呆れると同時に半分感心もしていた。
「はぁ……まぁ、それだけ口が回るならもう大丈夫ですね。
これ、あげますから、後は自分で頑張ってください」
そう言って、私は氷魔法で成形したグラスに水筒の水を入れたものを渡した。
「これは、どうも、ありがとう」
「それじゃあ……」
と、そのまま立ち去ろうとしたところ……
「あっ!いや、待ってほしい!」
男は背を向けた私の外套に縋りつくように端を掴んだ。




