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意識する人
「……別に負けたことがない訳じゃない。
他のきょうだいには負け続きだし、きょうだい以外にもキュウさんに負けたりもした。
だけど、この負けは特別なの」
「なんでや?」
「相手が……ちーちゃん……チヒロだから」
「ちーちゃんはん?」
くすっと笑いが吹き出た。
”ちーはん”だと違和感があるのはわかる。
でも、それなら、”ちーちゃん”呼びでも、”チヒロはん”呼びでもいいのに、”ちーちゃんはん”って……
「話それるけど、あなた距離感変わったよね」
「え、なにが?」
「呼び方だよ」
「せやろか?ジブンではわからんわ」
例えば、”セレーナはん”が”セレナはん”になったように、愛称呼びになっている。
その結果が”ちーちゃんはん”だけど……
「まぁ、いいよ」
「せやったら、何が特別なんや?」
「チヒロは、仲間……友達だけど、同時にライバルだから」
「ライバル……?」
「明確に意識しだしたのは、つい最近だけど……
私と近い目線で競い合ってくれる存在なの……だから、負けられない、負けたくないってこと」




