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虫に話すことでもない?
「あーっ、もう!
……別に話したくない言うんやったら、それでええけど。
こんな吹けば飛ぶような虫にでも、話せば気も紛れるっちゅうもんちゃうの?」
「……」
まぁ、それもそうかも知れない。
どこまで理解出来るのかは、わからないけど。
「口にしてしまえば、単純な話なんだけど」
「!……う、うん?」
「負けて悔しい。だから、気分もよくない。
それだけって言えば、それだけ」
「あー……さよかぁ……」
蝶はピンときていないようだ。
そもそも、蝶に勝ち負けの概念はあるのだろうか?
虫……それに野生動物にとって、勝ち負けとは生死のこと以外、気にすることはないだろう。
そういう意味では生存しているだけで、勝ちであり、
負けは死んだ、その瞬間ではないだろうか。
そういう意味では、蝶は今勝ち続けている……その概念を知らぬままに。
「ま、あなたに言っても仕方ないか……」
「クリスはんにとって、その”負け”はどれだけの意味があるんや?」
「っ……」
どれだけわかって、言っているのか……随分と哲学的な問いに聞こえた。




