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距離感
「それはそうと、クリスはん」
「なに?」
「元気ないんとちゃうか?」
「……」
あるかないか、と聞かれれば、ないのかも知れない。
そんな機微に触れるような、繊細な心の動きを読んでくる……
やはり、これはこの場にいる蝶だからではないだろうか。
「……どうして、そう思うの?」
「あ、いや、なんとなくやけど……」
蝶にしては歯切れが悪い。
「そう、あなたにはそう見えるのね」
「あ、ああ、うん、まぁ、そんなところや」
そこに潜むニュアンスに蝶は気付かない。
でも、この会話を聞いているであろう、セレナはどうだろうか?
「……」
「いや、どないしてん?」
ふぅ、と息を吐き出す。
まぁ、話さないなら、それでいい。
いくら、追及したって、本人が認めないならそれまでだし、
何か話したくない事情だったり、理由があるのかもしれない。
「お互いさま、かな」
「いやいや、訳わからんのやけど」
蝶はそうだろうけど、セレナには伝わっただろうか。
答えることはないだろうけど。




