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物言わぬ彼女への疑念
「そんなん言われても、ガワはこんなナリやし、
難しいこと言われても、蝶のわたしにはわからへんわ」
「それは、セレナも同じ意見なの?」
「……」
「…………」
「そりゃあ、そうやろ。わたしが考えることは、セレナはんの考えることなんやし」
「……そう」
解答にラグがあった。
蝶とセレナのラインに距離は関係ないと、自身で言っていたことを思えば、
解答につまったとも取れる。
それはつまり、セレナが嘘をついたのではないだろうか?
何かを隠している……そんな気がしたのは、蝶の言動に違和感を覚えてからだ。
蝶は自分に意思はないようなことを言うけど、
その行動・言動の一つ一つに蝶自身の意思を感じるようになった。
話し相手がいるだろう、と外套に入るのを躊躇ったのは、そのいい例だ。
セレナならその行動の非生産性に気付けたはずだ。
蝶が考え、私に気を回したから、そんな自分を顧みない行動をとったのではないか?
確かに頭はよくないかも知れない。
だけど、確かに蝶に”個”があって、そこに人格が宿っているのなら、
それを黙っているということは、確かに隠し事だった。




