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騒がしい相棒
「あ、せやな……でも、話相手もおらんと進むのもしんどいやろ?」
「……そうだとしても、外套の中からでも、あなた喋れるでしょ?」
「確かに」
呆れた私は無言で外套をたくしあげた。
「避難や避難!」
ため息が出た。
と言っても、蝶はそんな口ぶりでも脆弱……か弱い羽虫だ。
それなりに気遣ってやらなければならない。
「そのままだと蒸し暑いでしょ」
「虫だけに?」
「……冷やしてあげようと思ったけどいらないみたいね」
「わーーっ!うそうそ、そんな殺生やで~クリス大明神さま~~」
いちいち癇に障るのはなんなのか……
でも、こんなことでへそを曲げるのも馬鹿らしい。
「『アイス』『ウインド』」
魔力と魔法を調整して、外套に冷風を送り込む。
「おお、涼しい!」
あまり冷やしすぎないようにしなくては……寒さに弱いのも虫の特徴だ。
「いやぁ、生き返るわ」
「そう言えば、あなたって、蝶なのよね?」
「せやで。どないしたん、今更?」
「いや、さっきの話の続きだけど、
暑いところに蝶はいないのはそうかも知れないけど、
それとは別にあなたが暑さに弱いこと……暑さを感じれることは違うんじゃないの?」




