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飛翔体
「『無形の型』――!」
小刻みなステップの中で後ろ手に剣を持ち替える。
そして、気功を纏った左拳で殴りかかる。
「――『改』!!」
寸前のところで、気功を解除し、剣を振り下ろす。
フェイントの効果がチヒロにあったかは定かではないけど、先手を取った。
確実に捉えた――これで、勝つ、勝てる――!!
「――――ふ」
瞬間、チヒロが意味ありげに笑った。
「!?」
剣を喰らい吹き飛ぶチヒロ。
当てた側の私が呆気にとられた。
そう、幾度となく述べたように、『無形の型』の本命は二撃目。
防がれる前提の一撃目を、まともに受け止め、吹っ飛んだ時など想定していない。
そう、防ぐでもなく、正面から受けたのだ、チヒロは。
普通の人間なら無理だ。
しかし、チヒロにはそれを可能にする左手がある。
そう、かつて、私の剣を同じように真正面から受け止めた左手ならば、
まともに受け止めてもなんとかなるだろう。
してやられた――!!
まさか、そんな方法で防がれるとは――!!
…………防ぐ?




