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立ちふさがる、は敵
「試す……?」
何かひっかかりを感じた。
別に命のやり取りでもない手合わせで何かを試すというのはおかしくない。
でも、何かちーちゃんのソレは何か違う気がする。
「……クリスちゃんも、試してみたら?」
ちーちゃんが剣を構える……何か今までよりも洗練されたように見える。
技を試そうにも『改』の構えで対応出来る雰囲気にない。
「…………」
ワンテンポ、だ。
考えたように、『踊る剣技』のステップで入り、
ワンテンポずらすことで、構えを『改』用にして放つ……これなら、どうだろうか。
「うん……形状が違うことへの違和感はないね」
独り言を呟くちーちゃんを尻目に、私はステップを、リズムを刻み始めた。
屋根の上と、多少足場が悪くとも、対応は可能だ。
そもそも、舗装された平地で戦うことがどれだけあるだろうか。
屋根の上など、荒れた山地に比べれば、問題にもならない。
問題はそう、いつだって目の前の敵だ。
そう、敵――
手合わせとは言え、今、この瞬間だけは敵だと考えなければならない。
それだけの雰囲気がちーちゃん……チヒロにはあった。




