857/1085
はい、そうですかといかない理由
「正直に言うのなら、馬で砂漠を越えるのは無理ですわ」
「……まぁ、そうですよね」
とは言うものの、厳密に言えば不可能ではない。
常に私が魔法で砂地に通路を作り、周囲の気温や太陽の照りつけに気を配ることだ。
魔法燃料的には問題はない。
しかし、その場合は『ギンギ』に滞在中も常に馬車に付きっきりでいなければならない。
それでは到底調査にはならない以上、無理という意見はその通りだ。
「だとしたら、元々はどうするつもりだったんですか?」
「砂漠を迂回する道がありますわ。『ギンギ』に用がない行商がよく使っていると聞いています」
なるほど、それなら、シンシアさんもその行商に仲間入りする形だったということだ。
「ですが、うーん……」
シンシアさんの気持ちはわかる。
海を渡った時のように馬達に愛着があるだろうし、
そもそも馬車がなければ、シンシアさんの商売は成り立たない。
かと言って、馬達、あるいはシンシアさんを置いて、
いったん『ギンギ』に向かい、戻るというのも非効率だろう。




