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蝶≒伝言板≒人形
「……」
セレナは答えない。答えられるはずがない。
だからこそ、代弁者たる蝶がその役割をこなしているのだ。
だが、蝶は蝶だ。
会話が成立しているようで、伝令役としては知能が足りていない分、
細かいニュアンスだったり、表現の難しいことを伝えることは出来ない。
それでも、今はその蝶を介してからしか答えは来ないのだ。
だけど……
「……ふぅ」
さっぱり、わからない。そんな表情で蝶は両手を広げ、肩をすくめて見せた。
「…………そう。なら、いいよ。
だけど、それは蝶が言語化出来ないだけ?それとも、セレナが……?」
すると、蝶は能面のようにスンと無表情になった。
「わたしが言葉に出来へんだけや」
……能面?
いや、どちらかというと人形だ。
蝶が言ってるか、言わされているのかもわからない。
ただ、それ以上、セレナを疑ることも出来なかった。
「ま、ま、ええやんか、そんなことは」
「元はあなたが会話に混じってきたから、脱線したんだけど」
「それに関しても、仮説ながら、答えが出たんとちゃうか?」
「答えって……そっちが一方的に意見言っただけで、肯定も否定もされてないでしょ」




