平穏だった夜
私達はその後、食事をとって、部屋に戻った。
店主からは、くれぐれも締め切っている窓とカーテンは朝まで開けないように言われた。
「うん、カーテンだけど、テープで外に光が漏れないようになってる。噂通りなら、これで大丈夫そうだね」
私は他に光が漏れてる場所がないか確認して、相部屋の3つのベットの一つに腰を下した。
「うへへへへ……世界がアタシにもっと輝けと囁く……」
シンシアさんはお酒の飲み過ぎで、正体をなくしている。
まぁ、あとは眠るだけなので、問題はないと思う。
「”狼”のこと、なにもしないんですか?」
セレナは不思議そうに聞いてきた。
「うん、今回はね」
「どうしてです?いつものクリスさんなら……」
「ははは、私ってそんな認識なんだ」
思わず苦笑した。
「ついつい、人助けをしてしまうのが、クリスさんですから」
「そう言われると悪い気はしないけど……今回はお節介を通り越して迷惑になるからね」
「迷惑、ですか?」
「うん、お金を貰ってやる人がいるのに、私が出張ってやっちゃったら、
その人の仕事を奪うことになるでしょ?」
「それは……そうかも知れませんが、その人が成功するかはわからないのでは?」
「うん、だから、私の出番があるとしたら、その人がどうにもならなかった時かな」
この時点で、私はそう心に決めていた。
わきまえていた、はずだった。
でも、次の日、私はそれを撤回することになる。




