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統合と成長
魔物なき時代の勇者とは何か――
その答えはチヒロの中に生まれるのか――
だが、それだけが、唯一、以前と今のチヒロを繋ぎ止める共通の認識だった。
「…………」
コーヒーとミルクが自然と溶け合うのを待つように、チヒロはただ待った。
受け入れがたい己の人格が、自然と統合されるのを――
反発し合う水と油ではないのだ。
元をたどれば、同じチヒロと言う人間の人格だ。
遡れる共通の過去と、今の共通認識、これを足掛かりに人格を統合していく。
結果として、統合されれば、その形で安定する。
経緯など、どうでもいい。
コーヒーとミルクを混ぜ合わせたものが、
コーヒー牛乳だろうが、カフェ・オレだろうが、カフェ・ラテだろうが――
極論、カルーアミルクだろうがそれで完成されれば、その形で安定する。
――とはいえ、要素はあろうともそれはもう、元のコーヒーでもミルクでもなくなるのだけど――
しかし、それさえも大した問題ではない。
子供が経験によって大人となった時、子供らしさが消えても、それは仕方のないことだ。
故に、統合されたチヒロは、元のチヒロと違っていても、確かにチヒロなのだ。




