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勇者の定義 26
「え、エエ、あなたを……あな、たを……!」
マオは人差し指を突きつけるように前に出す。
しかし、その表情には躊躇いがあった。
それにはどんな意味があるのか?
チヒロは無意識に、はかっていた……そして、気付いた。
視線は僅かにチヒロ自身からずれていた。
その先にあったものは……
「……!」
チヒロは気付く、そして、その時どんな感情を抱くべきか、それを考え……自然に噴き出してしまった。
「はっ……はははっ!」
「!」
「笑わせて……笑わせないでよ!」
「な、ナニを……」
「アンタ、まさか……この後ろの魔王?を一緒に吹き飛ばすのを躊躇ってんの!?」
「っ……!」
マオは奥歯を噛む……チヒロの言葉は図星だった。
「ははは……!コイツはアンタの父親じゃない、ただ、姿形を真似ただけだ……!」
「ダマれ!」
「ああ、そうか!
アンタ、コイツが来た時にまるで、本物の父親が舞い戻ってきたみたいな態度だったね!
……そうか、だからか!
アンタ、父親を失った事実を受け入れなくって、コイツを本当に父親だと思いこもうとしてるのか!」




