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勇者の定義 21
マオは大きく目を見開いていた。
そして、震える声を絞り出した。
「お、オ父さん……!キテくれだんだ!」
それを見て、チヒロは舌を打つ。
「……馬鹿なことを言う。アレが父親に見えるのか」
チヒロが悪態をに呼応するように、魔王?の目が光った。
「!」
チヒロは身構えた。
しかし、魔王?はチヒロではなく、マオに飛びかかった。
「なにを……!?」
理性ない怪物と化した魔王?が娘に、マオに襲いかかる……ように見えたが、その実は違う。
際限なくマオに襲いかかる斬撃を、魔王?は引き受けた。
「ア……!」
強引に標的を自分に切り替えた魔王?は身を守ることもなく、無防備に斬り刻まれる。
「コイツ……」
魔王?の目的は明らかだ。
自身を犠牲にしてでもマオを助けようとしている。
確かにチヒロが前述した技の性質上、身代わりに自分が死ぬ覚悟があるのなら、
技に捕まった者を救うことが出来る……
故に、魔王?は”変わりに死ぬこと”でマオを助けたのだ。
もっとも、彼にその意思があったかどうかは定かではないが……




