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勇者の定義 20
「うん?」
マオの視線が自分から外れていると感じたチヒロはその視線の先……斜め後ろに振り向いた。
そして、確かに、それはそこにいた。
「……は?」
そこにいたのは魔王……チヒロが先程殺したはずの、だ。
「……いやいや、アンタなにやってんの?生きてちゃ駄目だって、
また、殺されにきたの?」
チヒロは混乱しながら、太刀の切っ先を向ける。
一見、冷静な態度を取るチヒロだったが、内心は混乱していた。
復活?蘇生?
いや、あんな風に粉々になって、そんなことがあり得るものか。
なら、これは――
「――別個体、か」
魔王と思わしきそれはぐぐ、と首をチヒロに向けた。
まるで、昔みたパニック映画のゾンビのようだとチヒロは思った。
「なら……そんな死人は地獄にでも、『次元斬』!」
ぼとっと、魔王?の首が落ちる。
チヒロは切り捨てたあと、確認のために向き直る。
すると、断絶したはずの魔王?の首と近くに倒れていた胴体が、
ずずず……と蠢きながら、ひっついた。
「……本当にゾンビじゃないか」




