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勇者の定義 16
ふぅ……と、マオは息を吐き出した。
「リカイ出来ない?ナラ、それでもいい!」
マオは両手を交差させた。
「『クアイエッド』」
光がはじけ飛んだ。
夜空に浮かぶ星のように、マオの漆黒の翼に光が散らばる。
「っ……させるかぁっ!」
マオの次の手を防ごうとチヒロは斬りかかる。
瞬間、光は閃光となって、強く光輝いた。
「!?」
チヒロの視界を封じる程の強い光だ。
見えなければ、対応は難しい。
その時、チヒロは無防備と言えた。
「『マイユ』」
マオの左手のガントレッドが背後からチヒロの胸を貫いた。
「っ……!?」
それは、魔王にしたことへの意趣返しだった。
マオはまるで最初からそこに居たように……チヒロを攻撃したのではなく、
人形のように広げた左手がたまたまチヒロの胸元と座標が重なったような振る舞いだった。
「アラ……?」
マオは左手を引き抜き、その掌を見る。
ずるり、とチヒロはしゃがみ込んだ。
「シンゾウ……潰したと思ったのに」
マオの左手は血がしたたるだけで、手応えはなく、臓器を潰した感じはなかった。




