810/1085
勇者の定義 14
「そうかい――だったら、苦しんで、死ね!!」
勇者が善で、魔王が悪とは誰が決めたのだろうか……
確かに、チヒロには大義名分が、正義がある。
しかし、必ずしも正義とは善とは限らない。
まるで、シリアルキラーのような態度の勇者に、親を殺された義憤に燃える魔王の娘――
善と悪に割り振るとしたら、どうなるだろうか?
仮にチヒロが悪だったとしても――問題そのものはないのだ。
勇者とは、魔のモノを殲滅する存在。
それが、ここにある勇者の定義。
故に、チヒロはどこまで行ったとしても正しい。
「『フルファ・メイティオ』!」
マオが掲げた両手と、羽根に光が収束したかと思うと、
縦横無尽に動き回り、四方八方からチヒロを襲った。
「……こんなもの!」
チヒロは力任せに太刀で薙ぎ払う。
「そこっ!『ティバイン』!」
と、極大のビームがマオの両手から放たれた。
「無駄だっ!!」
チヒロは、その極大と評したビームさえも太刀で薙ぎ払ってしまった。
しかし、薙ぎ払った次の瞬間、痺れたように太刀を握っていた右手は震えた。
「……!」




