勇者の定義 13
はじけ飛んだ衝撃で、チヒロの手元に太刀が戻ってくる。
チヒロはマオを見つめる。
そこに感情はない。
歩いていたら、虫を踏みつぶしていた。
その程度の感覚に近い。
ただ、当たり前の動作として、命を奪ってしまった。
チヒロにとってはそれだけだった。
その事をいちいち考えたり、悩んだりすることは非効率なことだ。
だから、チヒロはその太刀を振り下ろした。
「……『ラスタ・カメリカ』」
太刀が障壁に受け止められた。
「……ちっ」
その時、チヒロにあった感情は”面倒くさい”だった。
あんな父親の最期を見て、まだ抵抗しようという気持ちがあるのか、と……
「無駄だから、やめたら?抵抗しないほうが綺麗に殺してあげられるし、苦しみも少ないけど」
「……ナンデそんなコト、アナタに決められないといけないの?」
「客観的な事実。今さっき父親の死に方をみたでしょ?」
「エエ」
「だったら――」
「ダカラこそ――『フェンミリネ』!」
マオの後頭部には大きなリボンのようなヘッドギアが現れると同時に、
両手にはガンドレッドが、背には蝙蝠のような羽根が現れた。
「オ父さんをあんな風にコロされて――ヤリ返さないなんてことデキない!」




