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勇者の定義 11
「はは!笑わせないでよ!」
チヒロはそう叫ぶと同時にビームを薙ぎ払った。
魔王親子が用意していたビーム……その弾は全て尽きた。
すると、チヒロはあろうことか、太刀を槍投げのようにブン投げた。
「オ父さん!」
「ヌぅ……!」
予想外の行動だったが、魔王は咄嗟に避けれた。
太刀は親子の間を通過する――
「『次元層を接続』」
――かに思えた太刀は魔王の腹部の前に現れ、その身を貫いた。
「ぐぁぁああああアアアッ!?」
「お、オ父さん!?」
魔王はその場に崩れ落ちた。
それを見て、チヒロは吐き捨てるように呟いた。
「魔王と言っても、この程度か……」
チヒロは普段と変わらないように魔王の元へ歩を進める。
魔王にはそれが、死神の行進に見えただろう。
「ま、マオ、逃げロ……」
「ふざけてんの?」
チヒロは目でマオをけん制しながら、太刀の柄を掴んだ。
「自分から首を突っ込んだくせに、状況が悪くなったからって逃げられると思うな」
チヒロはマオを睨む。
マオは身体がすくんで動くことが出来なかった。




