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勇者の定義 9
「……被害者ぶるな。アンタが魔王である以上、殺し合う宿命でしょうが!」
チヒロは激高した。
そして、その怒りをぶつけるように、魔王へ剣を振るった。
「ッ……!お父さんっ!」
「『デザイヴ』」
魔王の前に大きなつららのような尖った結晶が現れた。
魔王はその結晶を掴むと、剣のようにして、チヒロの太刀を受け止めた。
火花が散る。
チヒロの太刀は結晶の剣を削るように押し進む……
やがては、両断するだろうが、その速度では遅すぎる。
押し負けることはなくとも、太刀を使用している状態で、
魔王の娘……マオに無防備をさらすことになる。
「ちぃ……!」
チヒロは離脱する。
仕切り直すためにずざざ、と床を滑りながら後退するが、何度も同じ行動を見せすぎた。
読まれていたのだ。
「『ディファン・エレピリア』」
マオは魔法の矢を数十本……いや、今この時も増殖し、数百本も展開し、照準をチヒロに向けていた。
そこに魔王が手を重ねる。
すると、展開したいた魔法の矢は肥大化し、一本一本が強力な魔力を纏うようになる。
流石のチヒロも、背中に冷たいものがつたった。




