勇者の定義 6
「なら、とっとと終わらせてもらう……!」
チヒロは剣を構えた。
その剣は言うまでもなく、チヒロと一体化した”大剣”の片割れの小太刀……
しかし、無機物であるはずの小太刀は今回の旅の中で自立進化し、
その長さはもはや小の文字は必要ないほどに……
物干し竿のような長細い太刀へと進化していた。
その切っ先を今代の魔王へ向ける。
魔王は、諦観のような表情で言葉もなく笑うと、その宣言の通り、
無抵抗で大の字に両手を広げた。
まるで、その心臓を捧げるように――
「……感謝はしておく。面倒な手間が省けた」
チヒロは一拍溜める。
魔王をただ殺した時の惨事は経験している。
”終末の獣”の大量放出――
それを防ぐ方法はすでに見当はついている、次元属性の攻撃で”獣”の通り道にならないように、
空間ごと断ち切ってしまえばいい。
一瞬、チヒロの脳裏にはそれ――”終末の獣”の発生こそが目的かと思い浮かんだが、
チヒロが剣に次元属性の膜をまとっても、魔王に変化はない。
もっとも、それが何なのか、理解していない可能性もあるが――どちらにしろ、チヒロには関係ない。
魔王に思惑があろうと、なかろうと、その剣で魔王を斬ってしまえば、全てが終わるのだ――
そう、斬ることが出来たなら――




