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イビツな私
まずい、ミカ姉さんのことは話せない……
いや、ショウ兄さんのことを信用するなら話せないわけでは……でも、ミカ姉さんとの約束は……
「まぁ、別にそれはいい」
「え……」
「誰しも話せないことを抱えているものだ。それを無理に聞きだすつもりはない」
「ショウ、兄さん……」
「だから、それはいい。問題は、お前が『ギンギ』に向かおうという気持ちが薄いことだ」
「気持ちが薄いなんて、そんなことは……」
「都合が悪ければ、避けようと考えているだろう?」
「……っ」
それは、そうかも知れない。
「もう少し、自分自身のことを考えろ。
自分の本当の名前がわからないなんて大事だぞ」
「そう、ですね……」
確かにそうだ。
もちろん、衝撃的な事実だ。
でも、現状不都合を感じていない。
名前は”クリシュナ”でも愛称の”クリス”でも事足りている。
優先順位をつけると、どうしても下位になってしまっていた。
「……現状に問題があろうとなかろうとそれは関係ない。
通常あり得ない出来事……歪みが出来ていることが問題なんだ」




