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感涙
「え……あっ……」
頬を熱いものがつたった。
私はそれを拭う……しかし、すぐにまた熱いものがつたう。
私は自分がぽろぽろと涙を流していることにすぐには気付けなかった。
そして、涙だと気付いてからも、何の涙なのか、わからなかった。
ショウ兄さんが認めてくれた嬉し涙か、
勝たねば全てが終わる重圧から解放された安堵なのか、
あるいは『ジャイロ・マグナム』と形を変えたとは言え、『ショット・マグナム』を習得した喜びか……
ただひとつ確かなのは、私は嬉しかった、それだけだった。
あふれ出しそうになる感情を、声を殺して抑えた。
それでも今はただ、この喜びに浸っていたい。
長年の葛藤が報われた、そんな気がしたから――
――
「……クリス」
目を開けると、ショウ兄さんはハンカチを投げてよこした。
それを受け止めると、ショウ兄さんは木箱を椅子代わりに腰を下ろした。
「悪いが、今だけ、もう少し借りるぞ」
そう言って、ショウ兄さんは回復魔法で自身の治療を始めた。




