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刹那の永遠
ナイフは直線軌道だ。
射線軸からさえ逃れれば、当たらない。
そして、ギリギリだけど、地面を叩いたことで、その軌道から逃れた。
ナイフは頬の2ミリ先を通過する――
だから、今はナイフを気にするな。
ショウ兄さんの次の行動を――――
「――――――」
圧縮された時間の中で、ショウ兄さんを見つめ続けた。
すると、ショウ兄さんもまた私をただ見ていたのだ。
「――っ」
ナイフが掠める。
その瞬間、ショウ兄さんは口を動かした。
唇の動きを読む。
この圧縮した時間でなければ、読み取れない速度で、私に向けて言葉を放ったのだ。
”そうだ、それでいい”
「っっ!!」
集中力が途切れた。
私は咄嗟に勢いを利用し、大きく距離を取る。
姿勢を戻し、ショウ兄さんに向き直る、が、すでに元いた場所にはいなかった。
視界にいない――なら、背後か。
私は振りむくと、5メートル程離れた場所で、ショウ兄さんは投げたはずのナイフを回収していた。
ショウ兄さんは、ナイフを手元で遊ばせながら、呟いた。
「――リミットまで1分半と言ったところか」




