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突入
「すぉっ!」
背中に回し蹴りを受けて吹っ飛ぶ――どうでもいい。
左手のナイフも右手の剣も衝撃で離してしまった――それは優先事項ではない。
ショウ兄さんがナイフを回収してしまった――それも、もはや構わない。
ただ、見ることさえかなわないのなら、その一切が意味を成さない。
思考を加速させろ。
目をそらすな。
「――」
言うなれば、これは”ゾーン”に自らの意識に入るに等しい行為だ。
戦士や兵士、スポーツ選手などが、絶好調の時に体感する超集中状態”ゾーン”。
当然、任意で出来るものではない――本来は。
だけど、おぼろげながら、論理はある――そして、経験も。
思考を加速させ、目の前の一切をそのことに集中させる。
今回で言えば、ショウ兄さんの動きだ。
「――ふ」
ショウ兄さんの口元に笑みが浮かぶ――その意味は何か。
目を、そらすな……!!
「――」
回収したばかりのナイフを振りかぶり、投げた。
見ろ。
そして、最適解を出せ。
「っっっあっ!!」
前のめりに吹っ飛ぶ最中、私は自身の両手を地面に叩きつけた。




