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利なき不利
そんな私に構わず、ショウ兄さんは言葉を続ける。
「お前が対処に手間取っていた、この動き……」
”スライド”した――まさか、この動きの種明かしをするというのか?
「『シャドースウェー』と言う。その名にあるように、キモは影にある」
「……」
呆気にとられた。
もちろん、私にとっては有利に働くことだ。
でも……だからこそ、ここで種明かしする意味がわからない。
「自身の影の分、後退する特殊な技法だ。故に発動条件は影だ」
全て明かしてくれるのならば、それこそ、決着がついてからでもいいはずだ。
「だが、自身の影と他の影が重なった際、その境界はどうなる?
この場においてはなくなるんだ」
理解出来ない――いや、それでも可能性があるとすれば――
「故に前後左右に上下……方向の制限はなくなる。そう、この路地裏では、な」
――シュウ兄さんはまだ、ハンデが足りないと思っているのか。
「移動距離の限界は変わらないがな。だから、発動後に詰められた際は、同じ方法は取れなかった」
そんなの――納得いかない。
「そう、連続使用も無理だ。
だから、移動限界と連続使用不可なのが、弱点というところか」




