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封じ手
自分で引き抜く。
「ぐっ、くっ」
声が漏れるのと同時に血もあふれ出す。
でも――
「……これで、ナイフはもう私の手の中です」
通常の戦いであるなら、あまり意味はない。
ショウ兄さんには他に予備の武器はいくらでもあるだろう。
でも、今、この場においては、このナイフさえ封じてしまえば、
それで、ショウ兄さんは武器が使えなくなる。
そのナイフを見て、ショウ兄さんはとんとん、と自身の首を軽く叩いた。
「…………OKだ」
来る――と、身構えた瞬間、ショウ兄さんは踵を返して、跳んだ。
「あ――!!」
すぐにそのまま追いかけようとした。
だけど、このナイフ……どうするのが正解だ?
その場においておけば、後から回収されるかも知れない。
そうなれば、せっかく手にしたアドバンテージを捨てるのと同義だ。
でも、持って追いかけるのも、手に馴染みのない武器を持って戦うことになる。
加えて、何かの拍子で奪われる可能性もある――
「――ええっと!!考える時間も惜しい!」
結局私はナイフを持ったまま、ショウ兄さんを追いかけた。




