761/1085
意識の差
「大道芸だよ、こんなものは」
「え」
「ミスディレクション……手品によくある種だ。
種明かししてしまうと、お前の意識が向いていない隙をついているに過ぎない」
「あ――」
あ、ああ、そうなのか――
突破口がないかと、思考を巡らせながら、戦っていた。
だけど、それが逆に悪手。
注意力散漫とは言わないけど、ショウ兄さんからしたら、隙を自ら作っていたようなものだ。
思考を内に向けてる隙間を狙い打たれていた……そんな実感がある。
「……手品と言えど、ショウ兄さんのスピードで行われては、知覚も認識も出来ない――
だから、私は何度も……」
「出来ない?出来なかった、だろ?」
「え……」
「種明かしをしたんだ……対処出来ないとは言わないよな?」
「そ――!!」
何かを言う、其れより前に私は反応していた。
なりふり構わず、大きく後退。
全てではないけど、自身に向けられる大多数の攻撃はそれで対処できる。
現にショウ兄さんが振り抜いたナイフは空を切っていた。




