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かくも予測は裏切られる
「はぁっ!!」
気合いを入れて跳ぶ。
有効打は見つけられたとは言え、追いつけなければ、話にならない。
全速力で、壁を蹴りながらも、リズムは意識し――斬りかかる。
「てりゃあっ!」
「……ふ」
と、”スライド”で避けられてしまった――空中で、だ。
「あっ!?」
ショウ兄さんは方向転換をしながら、私と反対側の壁を蹴る。
「どうした、何か想定と違ったか?」
ショウ兄さんはまるで、笑いを堪えるように言う。
やられた――いや、やられた……のだろうか?
「出来る事をあえてしなかっただけだ。そんなこともあるだろ」
空中での”スライド”を私の勘違いを誘うために隠していたのか、
あるいはそもそも、手加減して使っていなかったのか……どちらの意図があったのかはわからない。
ただ、これで私の想定は大分厳しくなった。
壁を蹴り、斬りかかる。
当たらない。
また、壁を蹴り、斬りかかる。
避けられる。
再度、壁を蹴り、斬りかかる。
躱される――
テンポはリズムは乗ったままだ。
でも、空中戦で、一回一回壁を蹴る以上、連続攻撃へと繋げられない。




