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渾身の一撃
『疾風拳』に乗せて、一撃必殺のマグナムナックルを叩き込む。
そもそも、一撃を当てること自体が困難なんだ。
ならば、それは一撃必殺でなければ、ならない。
出来る布石は打ったつもりだけど、あまりに心もとない。
だけど、今はこの一撃に全てを込めるしか――!!
「っ……!」
ショウ兄さんがはじめて顔を歪ませる。
血が、舞う――
私のではない。
ショウ兄さんの血だ。
「……当たった」
「そうだな、いい攻撃ではある。
だが、放心していていいのか?」
「!」
蹴りが来る!?
私は咄嗟に下に向けてガードを取る。
あ、いや、でも、私の反応を見て、ナイフで攻撃されたら――
と、思った瞬間、天と地がひっくり返った。
「あうっ!?」
私は投げられていた。
「惜しくはあった。まともに当たっていたなら、それでお前の勝ちだったかも知れない。
だが、もっと考え、もっと機を伺うべきだったな」
『マグナムナックル』は直撃しなかった。
ショウ兄さんの頬を掠め、頬の皮を少し切るところに留まっていた。




