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溶ける檻
だけど、何もしなければ、一方的に距離が離されていくだけだ。
「…………これくらいなら!『アイシクル・プリズン』!」
私はショウ兄さんの進行方向を塞ぐように、氷柱を横に何本も壁と壁に繋ぎ、
障害物として展開した。
氷ならいずれ溶けるし、高さを考えれば、街の人の生活に大きな影響はないだろう……
と、いうのは私の自己中心的かつ勝手な想像だ。
だけど、これなら破壊されるとしても、多少なりとも足止めは出来る――
――はずが、ショウ兄さんはそのまま、氷柱の間を直進と変わらないスピードですり抜けていった。
「なっ!?」
「……ちっ」
かと思うと、ショウ兄さんはこちらを向いた。
「『インフェルノ』」
そして、氷柱に向かって炎の魔法を放った。
氷は溶けだし、白い水蒸気が噴き出す。
あとを追っていた私はその水蒸気に包まれた。
と、次の瞬間、遮断された視界から、蹴りの一撃を腰に喰らい、私は地面に叩き落とされた。
「あぐっ!?」
「ええと、気体は冷ませば液体になるんだから……『アイス・ウインド』」
そして、堕ちた私に追い打ちをかけるかのように、局所的な雨がスコールのように降り注いだ。




